コラム “be mellow” vol2.

コラム

音楽と思い出と。

料理を作るときも、仕事をするときも、常に音楽を流していたのに、子どもが生まれてからは、すっかりかけることをやめてしまった。
音楽と言えば、子ども番組のCD、英語のCD、童謡など。
久しぶりにパートの仕事に出ることになって、前任者からスピーカーをプレゼントされた。

今は、どんな時代のどんなジャンルの音楽だって、インターネットラジオで無料でかけっぱなしにできる。たまたま選んだチャンネルから懐かしい曲が流れてきた。マライア・キャリーの最初の頃のヒット曲。

初めてのデートに出かけたものの、うまく英語で喋れず、彼が言っていることもさっぱり分からずにお店の壁に映っていたミュージックビデオをベンチ席に並んで、ひたすら見ていたっけ。その時に何度も、何度も流れていたのがこの曲だった。

店内の暗い照明、遠くに聞こえる人の話し声、タバコのにおい、その時のドキドキまでもがフラッシュバックする。

扉の開く音でハッと顔を上げると、一緒に仕事をしているメキシコ人の女性が入ってくるなり歌い出した。笑って拍手をすると、彼女は言う。「この曲ね、わたしが家を出たときにかかってた。9人兄弟で貧しくって……」。

懐メロ、というのだろうか。昔聞いたことのある歌は、青春時代を思い出させる効果があるらしい。「あの頃」を語る彼女のキラキラ光る瞳は、若い頃の輝きを彷彿とさせる。

でも……。若い頃に出会っていたら、美しくて社交的な彼女と無口なわたしはきっと友達にはなっていなかっただろう。仕事、結婚、出産、育児など多くの女性が歩むライフステージを共通言語にして、音楽をきっかけに私たちは語り合う。

 

これからはもっと音楽をかけよう。古い曲をかけて、昔の友達を思い出すのもいいし、新しい曲を聞いて、これから数年先にそれを懐かしく思う自分を想像してもいい。苦しくて、辛い経験があったとしても、きっと音楽が優しく包んでくれる、そんな風に思えた午後だった。

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